東京湾取材で再び千葉・三番瀬へ
昨年10月に取材した「日本の沿岸を歩く」東京湾シリーズ(6回)の最終回分の三番瀬を補足取材した。広島から東京まで夜行バス往復、浦安市から習志野市まで三番瀬沿岸を一日かけて回った。

三番瀬
三番瀬周辺には、わずかに残された自然がある。三番瀬の歴史をたどると、江戸時代は幕府に魚介類を献上する漁場である御菜浦(おさいのうら)であった。明治期にはノリ養殖が盛んになるなど、豊かな海の幸に恵まれていた。
だが、人口集中が進んで沿岸は開発され、戦後の高度経済成長期には大規模な埋め立てが進んだ。自然環境の悪化に伴い漁場環境は激変した。
三番瀬は東京湾に残された貴重な自然として、干潟保全の機運が高まった。埋立事業の白紙撤回や海域の自然再生と保全を目指す「三番瀬再生計画検討会議(三番瀬円卓会議)」の設置などを経て、市民参加による自然再生への取り組みが続いている。
三番瀬周辺の自然のうち、行徳鳥獣保護区や谷津干潟自然観察センターなどを訪ねた。樹木に囲まれた干潟、水面にくつろぐ野鳥。都会の中にあることを忘れるようだ。

谷津干潟自然観察センター
行徳鳥獣保護区では野鳥観察舎を新しく建て替えた「あいねすと」があった。野鳥や干潟の様子を間近に見ることができる。周囲の小道を人々が散策やジョギングを楽しんでいる。

行徳鳥獣保護区

野鳥観察舎「あいねすと」
三番瀬をルートに含むとされる「第二東京湾岸道路」計画が再び動き始めたようだが、20年前に堂本千葉県知事(当時)が埋め立て計画白紙撤回してから、自然に対する社会や人々の意識は変わっている。計画がすんなりと進むとは思えないのだが…。
取材を終えて東京へ戻る途中、「いつかは」と思っていた第五福竜丸展示館(東京都江東区の夢の島公園内)へ足を伸ばした。計画が甘く、到着が遅くなって閉館した後だったが、建物外にあった福竜丸のエンジンは見ることができた。

第五福竜丸のエンジン
夕暮れにマリーナの向こうにそびえるスカイツリーを見ながら「次はちゃんと入館しよう」。バッグの中には計画通りに買い込んだホンビノス貝が入っていた。

購入したホンビノス貝
ちなみにこの貝は、アメリカ原産の二枚貝で2000年頃から千葉県などで繁殖した。厚みのある身と濃厚な旨味があり、アメリカでは食用として広く親しまれているという。日本では当初邪魔者としだったが、味の良さなどが評価され、現在では漁業権が設定されている。船橋市漁業協同組合では重要な海産物として「浜の救世主」と評価、千葉県は2017年に「三番瀬産ホンビノス貝」を千葉ブランド水産物に選んだ。
20251001 revised