「宝の海」有明海&八代海を歩く
環境情報月刊誌「グローバルネット」に連載中の「日本の沿岸を歩く」の取材地は有明海&八代海。取材までに梅雨明けとなっているのか気になったが、梅雨は平年よりかなり早く明け、逆に猛暑を心配することに。それも杞憂となり、終わってみれば博多を拠点にレンタカーの走行距離は7日間で1,400㎞、フェリー利用2回。いつもの「弾丸取材」であった。

長島蔵之元から天草牛深へ向かうフェリー
取材のテーマには、環境問題では水俣事件や諫早干拓問題など深刻なもので現在も傷の癒えないものがある。漁業はノリ養殖や各種の魚類など豊かな海の幸。これまでも断片的に訪れた場所ではあるが、今回の取材で有明海&八代海の規模の大きさを実感した。干満の差が最大6m、ムツゴロウが干潟で飛び跳ねていた。
取材ルートを紹介する。
<14日>博多から佐賀県、熊本の各県庁を訪ねて情報収集。水俣へ向かう。
<15日>水俣市。鹿児島県の長島へ。
<15日>長島蔵之元からフェリーで天草牛深へ。養殖組合、崎津、キリスト教関連の史跡。
<17日>天草上島のえびす像など。天草五橋を渡り熊本市の川口漁協。柳川へ向かう。
<18日>三井炭鉱遺跡。柳川市の掘割取材。長洲からフェリーで島原多比良へ。
<19日>諫早干拓地と防潮堤。島原半島左回り。口之津民俗資料館、原城跡、雲仙岳。
<20日>鹿島(佐賀県)のムツゴロウ(ムツカケ体験)。博多に帰還。
水俣については若いころ、チッソの工場に前を通り過ぎたことがある。ユージン・スミスの写真集や小説『苦海浄土』(石牟礼道子)など情報は膨大だ。
短い時間だったが、犠牲者をまつる乙女塚も訪ねることができた。チッソの完全子会社、JNC株式会社工場正門の写真を撮ろうと近づくと、守衛が手前の橋は会社の所有だから入らないように、と制止された。カメラは望遠が利くので意味がないでしょう、と言ってはみたが、もう少し愛想のある対応ができないものかねえ。

水俣病慰霊の碑
有明海と言えばノリ養殖。これから記事を書いていくのだが、取材で知ったドリュー女史、早野義章などの情報を深掘りしてみたい。佐賀空港周辺のノリ御殿は確かに立派であった。近年は不作だというが、食べてみると格別にうまい! 有明海の環境に影響を与えたという筑後大堰も最終日に福岡に戻る途中に見た。
取材期間中ほぼ曇りか晴天だったが、柳川だけは天気が不安定で時折雨。柳川なのだから当然柳川鍋を食した。外国人観光客にも出すので骨や臭いを完璧に除いてあり、大変美味であった。
天草や島原といえばキリシタンの歴史も興味深い。崎津の教会、大江教会、豊岡城跡、殉教戦千人塚、原城跡などを訪ねた。数十年ぶりに観た映画『サンダカン八番娼館』のテーマである「からゆきさん」についても、島原の口之津民俗資料館を訪ねて山崎朋子氏だけでなく、他の資料にも目を通しておく必要を感じた。

﨑津教会
ムツゴロウを針で引っ掛ける「ムツカケ」の体験場所では干潟にどっぷりつかって自然と一体になっている人がいた。ラムサール条約に登録された肥前鹿島干潟、東よか干潟、荒尾干潟の干潟を効率よく見ることができた。
夏なので日照時間が長く、行動時間が長くなり、いろいろと見ることができた。日が暮れると温泉と車中泊。午前4時20分に有明海の朝焼けは美しかった。車移動なのでゆっくりラーメン店を見つけることは難しかった。取材先で勧められた「玉名ラーメン」のこってりを味わいたかったのだが…。
最後になって恐縮だが、取材にご協力いただいた皆様には心から感謝したい。さあ、次は執筆作業が待っているぞ。