岩波ホール閉館を惜しむ

ミニシアターの草分けとして知られる東京・神保町の岩波ホールが7月29日に閉館することが公表された。創立から54年。世界の名作を上映してきたがコロナ禍による経営環境の変化が理由という。

学生時代にたむろしていた神田神保町の喫茶店「ラドリオ」の近くにあった岩波ホールは、ぽっと出の田舎者には文化の香りが息苦しいほどだった。一番記憶にあるのが『家族の肖像』。1978年日本公開のルキノ・ヴィスコンティ監督、イタリア・フランス合作映画。『終身犯』など数々の味のある演技をしていたバート・ランカスターが主演ということもあって出かけた。孤独な老教授を演じるストーリーは、当時の青年には「年寄りの話」であり正直あまりピンとこなかったが…。

チケットを探したら、ちゃんと保管していた。「ヨーロッパ文明の終焉によせて謳いあげる巨匠ヴィスコンティ畢生(ひっせい)のレクイエム」と格調高い宣伝文が効いている。

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