会社紹介の見出しにマスターベーション思考はNG

PRPHのPR見出し 地元向け求人案内の特集(中国新聞 就活応援キャンペーン2026年4月10日付)が面白かった。フロント面に「挑めば変わる 広島も自分も。」と打ち、有力企業70社それぞれの特徴をコンパクトにアピールする広告。企業が自社の広告に付けた見出しを競う「展示会」のようだった。確かに広告料金は安く済むのだろうが、果たして見出しのクオリティは十分なのか? 企業に対する評価と切り離し、見出しだけを検証してみたい。

■第一印象を決める見出し

特集は4ページ。1社当たり9㎝×9.5㎝のスペースに企業名、見出し、画像、プロフィール、会社概要(資本金、売上高、従業員数など)を入れている。見出しのスタイルは縦横、文字数に決まりはないようで、企業の多彩な競演となった。

企業は優秀な人材をリクルートしたいと願い、画像や見出しにメッセージを込めている。いい見出しは学生の関心を集めるだろうし、悪い見出しは情報が伝わらないばかりか、誤解を招く恐れもある。

広告は一般的には広告代理店が制作し、プロの視点で伝わりやすい内容に仕上げているので、企業が作るとなると「セルフサービス」的な状態。制作コストが少なくなるので広告料金は安くなるかもしれないが、見出し巧拙が目立つようになる。

■マスターベーション思考にご用心

気持ちよさそうなネコ企業が見出しを考える場合、立場が上の人物の意見が反映されることが多いようだ。そうした見出しでよく見られるのは「マスターベーション(自慰)思考」。すなわち「自分たちが訴えたかったこと」を詰め込み、「自分自身が気持ちいいこと」を優先してしまう。読む側の視点を忘れて「これだけ考えたから完璧だ」と、独りよがりの達成感に快感を覚えてしまう…。

言うまでもなく、読者に伝える見出しは、客観的かつ普遍的な思考によって作られるべきだろう。奇想天外、奇抜斬新となって「バスる」見出しが生まれる可能性は否定できないが、「急がば回れ」。良質の見出しを作る労力を惜しんではいけない。

 

■いい見出しは「いい会社」が多い

見出しには「正解」はないが、「よりよいもの(better)」にはできる。今回の広告の場合、担当部門の実力が反映されている。一般的に、企業の規模が大きいなどで、制作に余裕がありそうな企業のものは完成度が高く、理解しやすかった。

見出しの制作

いい見出しを選んでみると、
株式会社青木組 大地と大海が私たちのフィールドです
アヲハタ株式会社 フルーツで 世界の人を幸せに

いずれも地元でよく知られる有力企業。A「大地と大海が私たちのフィールドです」は自然のダイナミズムを連想させ、そこで働いてみたいと思わせるだろう。Bはジャムなどの製品と企業の目標が端的に示されている。

 

■悪い見出しは改良の余地あり

悪い見出しで多いのは「安易な言葉選択」。どこにでもあるような言葉を使い、ロジックが欠如したまま、体裁を整えている。そのため、読んでも伝わってこない。気になったものを選んでみた。

〇〇〇〇〇〇〇〇株式会社 私たちはお客様の 快適な環境を 創造します
「快適な環境」の「環境」は、プロフィールにある「幅広い業務」の中に含まれていると思われるが、具体的なワードの方がよく伝わるのでは。「創造」もよく見かける用語で、作る側が期待するほどインパクトはない。

〇〇〇〇株式会社 創業75年 中・四国地方トップクラスの「パイプのデパート」
見出しに詰め込む情報が多すぎる。「創業75年」「中・四国地方トップクラス」は省略するか、短くすることができる。見出しの文字数は少ないほど、インパクトが強くなる。

見出しを考える

株式会社〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇だから安心です。
社名を見出しに使っている。CMを見ることがある社名だが、見出しと重なるのはもったいない。アピールしたい情報をもっと入れた方が広告に「厚み」が出るだろう。読む側に「理解しろ」と求めているようで、不遜なイメージを持たれる恐れもある。

〇〇〇〇〇〇株式会社 「あたりまえをつくる。」地域を守り・支える地元活躍企業
「あたりまえをつくる。」は読む人によって解釈が異なる。インパクトを狙ったとしても、他の言葉と連携もなく、浮いている印象がある。「地域」と「地元」も似ており、どちらかを省略できる。

株式会社〇〇〇 地域に密着し、新たな可能性の創造に向け、挑戦し続けます
「地域」「可能性」「創造」「挑戦」が並ぶが、よく使われる用語ばかり。全体のイメージを描きにくい。具体的な商品名やサービス、あるいはそれらを連想させる言葉を選んだ方がいい。

株式会社〇〇〇〇 会社とともに良くなろう
間違ってはいない。だが、抽象的で、つかみどころがない見出しになっている。会社のどこが魅力であり、新人にどう活躍してもらいたいかを具体的に示せるはず。ひねくれた読み方をすれば「現状はよくない」と勘ぐってしまう。「良くなろう」は一歩進んで「進化」「発展」「成長」などのポジティブな言葉を選択できるのでは。

 

楽しかったのは、

デルタ工業株式会社 君の席(シート)、空いてます。
自動車シートを生産している会社のユーモアに、座布団3枚。職場の働きやすい雰囲気も連想させる見出し。
勝手に、どんな席だろうかと想像させていただくと、安定した「指定席」ではなく、入社後の努力次第で昇進できるような「自由席」かな、と思った。

あなたの席は空いてます

 

■新聞の優れた情報加工技術

メディアで見かける見出しを「簡単に作れる」と思っている人が多いが、完成品といえる見出しに到達するまでは、大量のエネルギーが必要だ。

「オールドメディア」と揶揄される新聞やテレビだが、長い歴史の中で培われてきた「情報加工技術」は盤石であり、広告でも確認できる。

残念ながら、近年の新聞広告は通販などの派手な全面広告が多く、本来の新聞社の広告制作力が反映されているとは思われない。それでも、今回のような新聞広告の見出しを手掛かりに、メディアリテラシーを鍛えるのもいい機会になりそうだ。

PRPHが実施しているPR広報の支援は、会社案内、チラシ、WEBサイトなどの見出しや文章の作成スキルを短期間でアップする。企業に合わせたメニューを用意できるので、気軽に相談していただきたい。