中国新聞のコラム天風録 「しゃかりき」横読みに物申す
今年の広島東洋カープのチームキャッチフレーズは「SHAKARIKI(しゃかりき)」。この熱い言葉「しゃかりき」が中国新聞のコラム天風録の中に「横読み」として登場した。これは止めるべきだ。
■上下に「横読み」応援メッセージ
天風録の横読みが出たのは、プロ野球の始まった3月28日付。前年も3月29日付にある。写真に示したように、コラムの最上部を横に読むと「しゃかりきに全力で優勝と日本一目指せ」最下部は「球場ももっと赤く染めて勝ってカープ」と読ませる。さらに▲も対称配置されている。

天風録の横読み部分
前日にサイトで予告している。
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/807108
■読者の反応は「!」から「?」
X(旧Twitter)にはこれに気付いた投稿が見られ、「すごい!」「びっくりした」などという賞賛の声があった。ファンの心情を代弁してもらってうれしいと思ったのだろう。
読者を驚かせ、カープ応援の熱い気持ちを共有したい―というと書き手の気持ちは伝わってきた。ここまで完成させるのに膨大なエネルギーを費やしたことも推測できる。
遊び心とユーモアなどを評価する声も多い。
農家民宿梨楽庵ブログ 天風録の横読み
https://relaxan-tottori.com/blog/2026/04/5409/
だが、意外性の大きさに比して、バスったというほどの反響ではなかったようだ。横読みに「!」と驚いても、そこで「?」と腑に落ちない感じを持つためではなかろうか。
■新聞は「公器」であります
何よりも、新聞は「公器」である。公器とは、特定の個人のものではなく、社会全体や公共のために存在し、役立つものと考えられる。新聞や放送などのメディアがそうである。
本紙で説明はないようだが、公器である新聞に、横読みを加える必然性を知りたい、と思うのである。誰かが望んだことなのか?
苦労してこさえた横読みを「見てほしい」「知ってもらいたい」という承認欲求を感じさせる。コラムの内容をコラムでない場所で売り込んでいるのも、少し考えれば妙な話だ。
執筆した当事者がそのあたりの背景を説明している。
中国新聞コラム「天風録」、カープ開幕戦に合わせた仕掛け 筆者が明かす執筆の裏側(2026/3/28)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/808188
この中に、中国放送がカープ中継日の新聞テレビ欄に仕込む「縦読み」に刺激を受け、自分も挑戦したと書いている。テレビ欄は横組みであり、最初の一文字を縦読みさせる。2ちゃんねる時代からある手法。この縦読みに触発されて「何度も修正を加えるなど途方もない労力をかけた」と明かしている。

鞍馬山の天狗
コラムで横読みをさせる新聞は他になさそうである。ギネスブック級の秘技なのに他社(者)が追随しなかったのは、下記の新聞倫理綱領を知っているか、公器としての立ち位置を本能的に感じて抑制したのか。中国新聞も大っぴらに宣伝しなかったのは、どこかで不安を感じたからかもしれない。
日本新聞協会の新聞倫理綱領には、「正確と公正」として「記者個人の立場や信条に左右されてはならない」とある。表現の自由度が高いコラムとはいえ、天風録のような横読みはこのルールに抵触しないのだろうか。
日本新聞協会 新聞倫理綱領
https://www.pressnet.or.jp/outline/ethics/
正確と公正
新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない。論評は世におもねらず、所信を貫くべきである。
■中身より「横読み」を優先
横読みの作り方は、先に横読みの文を決め、その他の部分に文字を埋めていく。文章としてのつながりを持たせ、▲の位置合わせもしなければならない。そんな苦労があっても、コラム全体の文章を読むと流れがぎくしゃくして不自然だ。
「赤く染まったスタンドこそ逆転を導く隠し味だと信じて」の一文は何回読んでも釈然としない。
隠し味とは「入っていることを気づかせない」ものなので、どう気付くのか、どう信じるのか? 「逆転」とは最初から負けているの?…。
文章に本来あるべき言葉が省略され、文字合わせの無理がたたっている。読者はファン心理に加えて処理流暢性や権威バイアスなどがあるので、さっと目を通して「分かった気分になる」のだろう。
■日本語の文章芸は無限
横読みのような「暗号もどき」が文の中に隠されていれば、「次はどんな横読みがあるのか」「他の記事にも隠された文章があるのでは」などと妙な期待を煽ることにならないか。「サブリミナル効果」の不安も頭をよぎる。
横書きの遊び心やユーモアを否定しているのではない。問題は「横読みを入れる場所が適切なのか」どうかだ。
縦にも横にも読める日本語の文字芸の世界は無限なので、特別枠を設けるなどして楽しく展開する方法はいくらでもある。横読みはもちろん、斜め読み、逆読み…。「逆斜め2文字飛ばし3段組」なんて神業があれば、と想像してみる。
■共通する▲そろえの思考
横読み芸を是とする背景には、「▲そろえ」がある。せっかく書く力があっても、それを自ら削ぐような足かせ手かせを設けている。
既に▲そろえについての問題を指摘している。
中国新聞コラム天風録「▲そろえ」やめよ! 衰退脱出の試金石
https://prph-yoshida.com/2025/10/26/tenpuroku/
このコラムを交代で執筆する論説委員は、それぞれの経験、洞察、書く力を尽くして伸び伸びと自由に書けるはず。読者をうならせる内容にするには、▲そろえを止めるのが第一歩。中国新聞の顔、天風録の品質を充実させるためにシャカリキになってもらいたい。多くの読者と一緒にそう願っている。

天風録のイメージ
下記のブログは批判的な意見だ。
ぶるぼん企画室 字数合わせの言葉遊びなど新聞には不要https://buruki.jp/%e5%ad%97%e6%95%b0%e5%90%88%e3%82%8f%e3%81%9b%e3%81%ae%e8%a8%80%e8%91%89%e9%81%8a%e3%81%b3%e3%81%aa%e3%81%a9%e6%96%b0%e8%81%9e%e3%81%ab%e3%81%af%e4%b8%8d%e8%a6%81/
締めくくりの「中身で勝負せんと読者に見放されるで。」は重い指摘だろう。
天国のいかりや長介から、こんな喝を入れられてはまずいのだ!
https://www.youtube.com/watch?v=nucPCQhdIf4

